LONCO JOURNAL ロンコ・ジャーナル

PHILOSOPHY

  • 2020.08
  • 『物流DXの潮流』

皆様、はじめまして、株式会社オプティマインドの代表取締役社長を務めます、松下健と申します。

弊社は名古屋に本社を構えるスタートアップ企業です。「ラストワンマイルの配送ルートを最適化するAI配車システムの開発と販売」を行っております。配送伝票をもとに配車マンやドライバーの方々が行っている「どの車両にどの配送先(荷物)を割り当てて、どの順に、どういうルートで配送するのが良いか」という仕事をAIで計算するシステムを提供しています。詳しくは以下のサービスサイトをご参照下さい。

現在、ロンコジャパン様にもご活用頂いております。読者の方々で「配送の効率化や、誰でも配車出来るような仕組みに興味がある」という方がいらっしゃいましたら、是非とも弊社までお問い合わせ下さい。

誰でもカンタンに効率的な配車計画を。

さて、物流のDXに必要な要素の一つであるAIを開発している立場として、また、業界の全体像は見えないながらも、如何許か物流業界の方々とお付き合いさせて頂いている立場として、私から見える「物流DXの潮流」について述べさせて頂きます。

そもそもDXとは何なのでしょうか。DXとは、デジタルトランスフォーメーションの略であり、要すれば「デジタル化による事業革新」だと理解しています。参考として、経済産業省によるDXの定義を記載します。

<経済産業省(「DX 推進指標」とそのガイダンス)>
"企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること"

現在の傾向

物流業界をざっくり分けると「荷主」と「物流事業者」が存在します。それぞれの立場でのDXへ向けた取り組みが、今年に入り、より一層加速していると感じます。では「荷主」「物流事業者」それぞれの立場で、どういう傾向があるかを分けて記載いたします。

荷主のDX傾向

ドライバー不足やECの増加によって「運んで欲しくても運んでもらえない」状況になっている今、荷主にとって「お客様に安価に確実に届ける」ことが困難になってきました。物流コストが上がり、荷主にとっては事業採算性を揺るがす深刻なテーマです。従来、広告宣伝や、新商品開発に投資をしていた予算が、物流改革に投資をし始めているのは無理もありません。荷主にとって重要なのが「物流コストを最小化すること」、そして「安定供給できる物流網を確保すること」です。これらの背景から、荷主サイドがDXを行っている目的として、可視化や情報の連携、AIの導入による最適化を行うことで「業務改善」を図ることが多く見られます。

物流事業者のDX傾向

では、物流事業者は不自由なく仕事が取れるのか、というとそうでもありません。荷主が業務改善を図ることで、いち荷主あたりの受注額が減少する、もしくは単価が下がります。さらに荷主は、従来の「縁故や習慣」ではなく「コストや安定確保」の視点から物流事業者を選択するようになることが予想されます。それでも選ばれ続ける物流事業者は、「圧倒的に価格競争で勝てる」か、「荷主への提供価値を高められる」か、の二択なのではないでしょうか。これらの背景から、物流サイドがDXを行っている目的として、今までは実現出来なかった新しい取り組みを実現し、荷主に指名される為の「提供価値の向上と差別化」を図ることが多く見られます。

DXへの道のり

以上をまとめると「荷主のDX=業務改善」「物流事業者のDX=提供価値の向上」です。ですが、何かのタイミングでガポッ!と全てがDX出来るような魔法の仕組みはないと思います。また、DXという言葉が独り歩きしているようにも感じます。実はDXとは仰々しいものではなく、一つ一つの愚直な改善や新しい発見の先にあるものだと感じてます。例えば、ドライバーのバイタルデータを取得し、解析することで、積荷や荷降ろし時のドライバーへの負担の大きさによって単価が変わる料金体系を提示したり、滅多に車が走行しない道のGPSデータを解析することで、速度データや路面状況を地図会社に提供したり、庫内温度センサーをリアルタイムに送ることで、消費者への品質保証アピールに繋げたり、無限の可能性があると信じております。実現までは時間を要すると思いますが、それでも変化に適用し、新しい取り組みに挑戦されている企業には、より多くの最新情報が集まるのではないかと思います。そういった意識の高い企業様との取り組みを重ねていき、DXによる社会貢献の下支えをしてまいりたいと考えております。

最後に

荷主でもなければ物流事業者でもない私ではありますが、寄稿の依頼を頂き、「ポジショントークなく第三者的に見て思っていることを素直に書こう」と決め、このような記事を執筆させて頂きました。様々な方が物流業界のDXに向けて本気で取り組んでおられる中で、近年、それが繋がり始めました。一つ一つの変化にアレルギー反応すること無く適応していくことで、振り返ってみると「あ,気づいたらDXしてた」という日が来ることを心から願っております。

2020年7月5日
株式会社オプティマインド
代表取締役社長 松下 健

松下健

岐阜県岐阜市出身
名古屋大学大学院 情報学研究科 数理情報学専攻 博士前期課程修了
現在、博士後期課程
専門は組合せ最適化アルゴリズム

学術研究と実社会の架け橋になりたいという想いから、2015年にオプティマインドを創業
2018年6月、ティアフォー、寺田倉庫から1億円の資金調達を実施
2018年9月、国内最大級のスタートアップ登竜門であるICCサミットKYOTO2018 スタートアップカタパルトにて優勝
2019年10月、トヨタ自動車、三菱商事、KOIF(KDDI&GB)、MTGVから総額10億1300万円の資金調達を実施
2020年、 Forbes 30 under 30 Asia 2020 に選出